Giggle Game 制作ブログ

お知らせや独り言などを書き残します

『ゲームならではの物語表現とは』

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・本記事は『ニコニコ自作ゲームフェスMV』開催に伴い、
株式会社ドワンゴ様より依頼を受けて執筆したものです




物語をメインにゲームを作ってみたい。


そういうと、必ず
「小説でも書けば」「ゲームじゃなくてもいいのでは」
という人がいますが、そうじゃないんです。

ゲームで物語をえがくということは、
ゲームならではの物語表現をしたい
ということなんです。


この記事では、
漫画やアニメ、映画や小説には真似できない
ゲームだからこそできる
プレイヤーを楽しませるためのテクニック

難易度別に&具体例を挙げながらご紹介します。


これからゲームを作ってみようと思っているが
予め考えてあるシナリオを
どうゲームに活かせば良いか分からない
方や、

制作経験はあるけれどゲームシナリオとシステムを
今ひとつ上手く絡めることが出来なかったと感じている
方に
参照して頂けるよう、分かり易く解説していきます。



*簡単に自己紹介*
ジグル(Giggle Game代表兼唯一のメンバー)
ツクール製ホラーADV『Ib』に感銘を受け、自分もホラーADVを制作しているツクラー。
代表作『ベルとお菓子の家』『氷の世界』『アリスの娘』など。
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ヘンゼルとグレーテルがモチーフの『ベルとお菓子の家』、歪んだ関係の双子を主人公にした『氷の世界』、不思議の国のアリスモチーフの『アリスの娘』。全てシナリオ先行で制作したホラーADVです。




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表題一覧

●はじめに
●自分の物語に相応しいゲームジャンルを選択する
●ゲームは、プレイヤーに「操作する動機」を提供し続ける娯楽
●物語を進めることができるのは、プレイヤーだけ
●面白いシステムのゲームから学ぼう
●実践!ゲームならではの物語表現を作ろう
●まとめ
●終わりに



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●はじめに


まず、物語重視のゲームというと
そもそも「ゲーム」にストーリーが必要なのか?
という声が聞こえてきそうです。
いや、必要に決まってるジャン、と思う方は
飛ばして次の項に行って頂いても大丈夫です。


もともとゲームにおけるシナリオというのは、
ゲームを楽しむ上でのスパイス程度でしかありませんでした。
例えば、スーパーマリオワールドをイメージしてください。
あのゲームはお姫様を助けに行く、というストーリーですよね。

でも、多くのプレイヤーが楽しんでいるのは
ハラハラドキドキのアクションだったり、
意外な1upキノコの隠し場所だったり、
コインをどれだけ取れるかというチャレンジだったり。
ストーリーは、あくまでアクションを楽しむための補助線でしかありません。

ゲーム自体だけでも楽しいけれど、目標があった方が燃える。
ゲームにおけるシナリオとは、本来そういうものだったように思います。
ゲームとは、シナリオなどなくとも楽しめるものなのです。


さて、本来はスパイス、またはひとつの目標として用意されていた
「ゲームシナリオ」ですが、のちに「ビジュアルノベル」という
ゲームジャンルが登場します。それは、ドラゴンクエストシリーズなどを作った
中村光一氏が製作した「かまいたちの夜」に代表される
「サウンドノベル」を起源とするもので、
元々は「コントローラを握ったことのない人たち」に向けて
開発されたと言われています。

つまり、これまでゲームという遊びに興味が無かった人たちに、
なんとかしてゲームで遊んでもらおうと考案されたものです。

基本的には、プレイヤーは画面上に表示されるテキストを読み進めるのみで、
アクションゲームのよう複雑な操作はなく
「果たしてこれがゲームと呼べるのか」と思う人々も
少なくありませんでした。自分もその一人です。

しかし、ノベルゲームには紙面の小説には絶対にできない、
大きなゲーム性がありました。

それは、主人公の名前を自分自身で決定できること、
物語の途中にある選択肢によって展開や結末が大きく変わって行くこと
、でした。
ゲームならではの「入力」という要素で、
小説とは大きく違う「ノベルゲーム」と呼ぶしかない
新しい体験があったのです。

こうした「物語を重視したゲーム」は、サウンドノベル以降
さまざまなジャンルで発表されました。
個人製作ゲームでも、多数の物語が生まれています。

その結果、「自分も、面白いシナリオのゲームを作ってみたい」
と、ゲーム制作に向かわれた方も多数いらっしゃるでしょう。
本稿ではそんな方に向けて
「ゲームだからこそのシナリオの考え方」について書いていきます。



●自分の物語に相応しいゲームジャンルを決定する

まず初めに、自分が作りたい物語がどんなもので、
どんな風にプレイヤーに干渉して欲しいのかを考えましょう。

RPGツクールのようなキャラクターを操作できるゲームでは、
主人公(操作キャラクター)をプレイヤー自身に見立てることができるため、
プレイヤーの多くは「自由度」を求めます。

たとえ物語の進行上「急いであの場所へ行ってほしい」といわれたとしても、
その前にこの屋敷の中を全部調べていきたいとか、
もうとっくにイベントは終わったあの森、今戻ったらどうなるのかな、とか。
RPGをプレイしたことがある方なら、きっと覚えがあるのではないでしょうか。

しかし、RPGではないからといって、シナリオ重視のゲームだからといって、
そういった自由をプレイヤーから奪って良い理由にはなりません。



ib0.png

RPGツクール2000製ホラーADV『Ib』では、
主人公イヴが同行者ギャリーを仲間にした後でも
イベントが終了した場所を全て経由して
ゲームの出発点まで戻ることが出来、
それまでに出会った者とギャリーがちゃんと会話したり、
コメントしたりするよう作りこまれています。

ib2.png
裸の女性(の絵画)を見てビンタされたり、生意気なアリに大人げない態度を見せるギャリー。


些細なことのようですが、こういった作り込みが
「シナリオ重視」のADVには必要不可欠な要素になってきます。

ただし、これは大変な労力を要する作業でもありますし、
出来れば物語の本筋から逸れて欲しくない……
と思う人も少なくないでしょう。

この作りこみを回避する方法として、
一度イベントが終わった場所には戻れないようにする
という方法がありますが、明確な理由付けが無ければ、
プレイヤーは「ゲームの都合のためにプレイさせられている」と感じ
自分の意志でゲームをプレイしている」と思えなくなってしまいます。

キャラクター操作系のADVは、シナリオをメインにおきつつも、
ある程度プレイヤーに自由を許せるシナリオでなければ成り立ちません。
もし、今あなたが作ろうとしている物語の中に
「プレイヤーの自由」を取り込むことが出来そうになければ、
キャラクター操作系ではないADVゲーム、ノベルゲームなど、
予めプレイヤーの行動が制限されていることを明示したジャンル

選ぶ必要があります。


これらのジャンルでは、プレイヤーは
そもそも用意されたシナリオの通りにしか進行しないことを
大前提として理解しているため、イベント終了後の場所に
戻ることが出来なくても不満を感じることはありません。
楽しむ要素が別の場所にあることを、プレイヤーはちゃんと
わかっておいてくれるからです。


どんなに自由度が高いと言われるゲームであっても、
制作者の意図の中でしか物語を動かすことは出来ません。
そうは分かっていてもプレイヤーは
「与えられた範囲での自由」を求めるもの
なのです。



●ゲームは、プレイヤーに「操作する動機」を提供し続ける娯楽

また、あなたが見せたいと思っている物語が
プレイヤーに疑似体験させるに相応しいものかどうかも、
重要なポイントの一つであると私は考えます。

例えば、未熟な少年の成長物語を描きたいと思った場合でも、
プレイヤーの分身となる主人公があまりにも役立たずな上、
自分勝手で、他登場キャラクターに迷惑をかけまくり、
まるで反省しない子だったとしたら。

もしも、この少年が後に英雄になっていく物語なのだとしても、
序盤でプレイヤーが「このキャラクターを操作して成長させてやりたい」
と思えなければ、ゲームはそれ以上進むことは無いでしょう。

映画やアニメなどであれば、視聴者はとりあえず画面の前に座っていれば
とりあえず物語は進行し、多少気に食わない主人公であったとしても、
視聴者は何の努力をすることもなく、主人公は成長していきます。


しかし、ゲームは違います。もしキャラクター操作系ADVであれば、
プレイヤーが十字キーを押さない限り、目的地をクリックしない限り、
プレイヤーの気に食わない少年は成長どころか、歩くことすらしません。


ノベルゲームであったとしても、
プレイヤーが指先を動かして決定キーを押さなければ、彼の物語は進みません。

もしもRPGやアクションゲームなら
戦闘システムの面白さや攻撃エフェクトの爽快感など、
様々なゲーム性で主人公のマイナス要素を補うことも出来ますが、
物語をメインとしたADVでは……
どこで彼の欠点を補えばいいのでしょうか?

ゲームのシナリオを作るという事は、
何かしら「プレイヤーに行動を起こさせる動機」を
持たせなければなりません。


どんなに素晴らしい展開とその結末が待っていても、
プレイヤーが主人公の物語に付き合ってやろうと思わなければ、
そこに辿り着いてもらうことはできないのです。


majo2.png

RPGツクールVX製のホラーADV『魔女の家』は、
明確な殺意を持って襲い掛かってくる魔女の家に住む者たちの
様々な罠をかいくぐりながら屋敷の最深部を目指し、
最終的に元凶を知り、そこから脱出する物語です。

序盤では主人公の背景がほとんど語られず、
何らかの理由で魔女の家に迷い込んでしまった
何の罪も無い可哀想な少女を脱出させる物語なのだと
ほとんどのプレイヤーは解釈しますが、

道中、主人公に懐いた愛らしいカエルを
蛇のような化物のいる檻に押し込めなければ
進行しないというシーンがあります。

majo.png
カエルは嫌がっている。そうハッキリ書かれているが、前に進むには
「無理やり押し込む」しかない……


ここで主人公の行動に違和感を覚え、
「もしかして、彼女は『何の罪もない可哀想な少女』では
 ないのでは無いだろうか……?」
と気付くプレイヤーもいるでしょう。

しかし、ここに至るまでに
こだわり抜かれたドット絵による多彩な即死ギミックと死亡演出、
一度死んでみないと分からない巧みな罠と謎解きの数々に
魅せられているプレイヤーは、その違和感に目をつぶり、
可哀想なカエルを犠牲にして前に進みます。

普通に考えれば、自分(主人公)に懐いている小さな生き物を
嫌がっているのに無理矢理 捕食者へ差し出すなど、
たとえゲームであっても、取りたいとは思えない行動ですよね。

それでも、本作の魅力にすっかりハマッているプレイヤーは
「きっと彼女も必死なんだ」と良いように解釈したり
「こうしなければ前に進めないのだから仕方ない」と
うまく自分の心に折り合いをつけて、ゲームを進めてしまいます。


本作は超意外な結末で話題となり
前日譚が小説化されるほど人気のある作品ですが、
最大の魅力は、単に「意外性のある物語」ではなく
「プレイヤーに違和感を与えつつ、それでも
 最後まで見届けたいと思わせることのできるゲーム性」
なのだと、私は解釈しています。



●物語を進めることができるのは、プレイヤーだけ。
 ただ、プレイヤーにボタンを押させる。それがどれだけ難しいことなのか。

2つ前の項で、
プレイヤーに自由をもたせなければならないという話をしましたが、
ゲームという媒体で、物語を前に進めることができるのは、
プレイヤーだけに許された特権
です。
だからこそ、プレイヤーはゲームという媒体を選び、
その特権を活かし、そこに描(えが)かれる物語を楽しみたいと考えています。


長編RPGなどをプレイしたことがある人なら、
一度はこんな経験したことがあるのではないでしょうか。

この扉をくぐりぬければラストバトルだ。
そうわかっていても、なかなか扉をあけることが出来ない。
自分の心の迷いのまま、方向キーをぐりぐりと
上下左右でたらめに押し込んで、
主人公を扉の前でうろうろさせてしまう。

また、物語重視のADVなどでも、
「この選択肢を選べば明らかにあの人は死んでしまう、
 でもこの選択肢を選ばなければきっと物語は進展しない……」
こんな時、プレイヤーの心の迷いがカーソルの動きとリンクして、
たった2つの選択肢の間を行ったり来たりしてしまう。

……これらの行動は、映像作品では有り得ないことです。
もうこれ以上進めたくないと思っても、映像作品であれば
鑑賞者の意志とは無関係に物語は進んでいきます。


プレイヤーと、キャラクターの気持ち(行動)を
一致させることができる。

これこそが、ゲームの最大の魅力であると私は考えます。

そのためには、プレイヤーに思う存分悩み、
納得行くまで立ち止まり、覚悟を決める時間を
もってもらうことが必要です。

croe.png
クラシック音楽の演奏を通し、主人公の少女と少年が心を通わせて行くホラーADV
『クロエのレクイエム』。少年は彼女自身に「殺して」と頼まれてはいるのだが、
選ぶのに勇気の要る選択肢である。


大切なイベントが待ち受けている時こそ、
「この扉を開けますか?」
と、いつもなら決定キーひとつで開く扉に
選択肢を置いてみるとか。
(重要イベントは何度も観たくなるから
 セーブデータを残しておきたいという人も多い!)

そんな一手間でも、プレイヤーが受ける印象は大きく変わってきます。
プレイヤーの感情が動くシーンであればあるほど、
プレイヤーにその行動を委ねる工夫が必要なのです。




●面白いシステムのゲームから学ぼう
 システムを活かす物語、物語を活かすシステム……
 簡単なようで、難しい!でも、これが分かると凄く楽しい!


RPGツクール2000製ホラーRPG『Lost Maria -名もなき花-』は
ダークな世界を舞台に繰り広げられる
陰鬱なシナリオが魅力のRPGですが、
この物語を最大限に活かした独特のシステムと操作感で
終始プレイヤーを楽しませてくれます。

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オープニングをはじめ、重要なイベントシーンは映画のような演出で物語を盛り上げてくれます


まず、キャラクターを成長させるのは経験値ではなく
倒した敵の眼球や心臓などといった
パーツを食べる
というダークにもほどがあるもので、
これだけでも本作が異彩を放っていることは
十分に感じられるかと思いますが、
最大の魅力はバトルの協力システムです。


本作には主に2人のプレイヤーキャラクターがいますが、
プレイヤーは2人を別々に操作し
少しずつ物語を進めていくことができます。
このザッピングシステム自体はさほど珍しいものでは
ありませんが、本作ではこのシステムが
物語やキャラクターに非常にマッチしたものになっており、
そこにゲームとしての面白さを付加しているのです。

lost2.png
(左)アイテム画面。胃ぶくろ、眼球、脳みそは食料です……
(右)メインメニュー画面。ザッピングでいつでも主人公を交代させられます


まず、二人の主人公を別々に操作しなければならない
理由付けとして、彼らは赤の他人であり、
互いの存在を認識してはいますが、協力する気がありません。
同じ目的を持って行動しているものの、
お互い必要以上に関わりたくないという感情を
ゲームシステムそのものに落とし込んでいます。


「といいつつ、二人は同じマップ上にいる場合は
バトルが始まると援護に来てくれます。
協力する気がない、というシナリオになっていながら
バトルの時には助けてくれるというのは、矛盾していますよね。

これは、互いに必要以上に関わりたくないからと言って、
目の前で敵に襲われている誰かを無視できないという
彼らの人間らしさを表現していると私は解釈しています。
同行はしたくないけど、見殺しにするほどではない。
何となく、その気持ちが分かるような気がしませんか?

lost3.png
操作中ではないキャラクターは「SUPPORT」と表示され、通常の接近戦は行えず
銃器でメインキャラクターの援護射撃をします。バトル中でもザッピング可能。


さらに同じキャラクターでも自分が操作しているときと、
助けにきてくれているときでは、バトルの時にできることが異なります。
ザッピングをすることで『今操作していない相手』の姿を眺めるという、
従来型の物語とは全く違う描写手法をとっているわけです。

このように、ゲームのダークな世界観を
アイテムやキャラクターの成長システムに活かしたり、
キャラクター同士の関係性や特徴を
バトルシステムにそのまま反映させることで
物語をただのスパイスとしてでなく
「このゲームを構成する重要な要素」に昇華しています。

かなり上級レベルの技ではありますが、こんな風に
「物語とシステムを相互に活かす」ことが出来るようになれば
「ゲームである必要が無い」なんて、言われることは無いでしょう。

本作では、作者さんの「こんなゲームを作りたい」という
アイデアを全て詰め込んだのだろうと思えるほどに充実した
システムと、魅力的で個性的なシナリオが見事にマッチし、
「ゲームにしかできない物語表現」を体験できるのです。



●実践!ゲームならではの物語表現を作ろう
 どれも当たり前のような、ごくごく基本的なことのようですが
 実際にこれが出来るだけで、がらっとゲームのイメージが変わります!


本項では、登場人物の言動や行動、
それによって引き起こされるイベントだけでなく、
ゲームだからこそ見せられる物語表現について
僭越ながら自作品の例や、
有名なツクール製フリーゲームの具体例を挙げながら、
書いていきたいと思います。



【難易度:易】物語を分岐させる(マルチエンディング方式)

  実践は簡単! イベントの中に、選択肢とスイッチを入れるだけ。
  分岐ルートを作るのは、実はとても簡単なのです。


ゲームでは、プレイヤーに「自分がこのゲームを動かしているんだ」
と実感させる何かが無ければ、プレイを続けようと思ってもらうことが出来ません。
アクションゲームやパズルゲーム、シミュレーションゲームやRPGなど
その場でプレイヤーの努力が成果として現れるゲーム性と違い、
物語を主軸にしたADVにおいては、プレイヤーの行動や選択の結果
生まれる分岐ルートを作ることは「ゲーム的な物語体験」を高める要素の一つになります。


この時のポイントは
「選択肢と結末が密接に結びついていること」です。
選択肢には「意味」があり、その「結果」として結末があるのです。
単なる分かれ道で「右に進む」とグッドエンド、
「左に進む」とバッドエンド、では理不尽で冷めてしまいます。


童話「舌切りすずめ」では
欲深なおばあさんが「大きなつづら」を選択し
不幸な目に遭いましたよね。
強欲なおばあさんの選択が悲惨な結果を生む、という
選択と結末がマッチした
シンプルで分かり易いストーリーです。


「トゥルーエンド」という真相ルートがあるゲームの場合は、
「どういうルートを選ぶと真相にたどり着けるか」という設計が
ゲーム体験そのものになり、非常に重要です。
筆者の作ったゲームで実例を挙げます。


RPGツクールMV製ホラーADV『アリスの娘』では、
真実のエンディングに辿り着くためには
必ず一度HAPPY ENDと呼ばれる「BAD END」を経由しなくてはなりません。
(これは、あえて先に最悪な結末をプレイヤーに見せ
 マルチエンディングであることを明かし、
 「こんな結末は認めない!自分の手で変えてやる!」と
 プレイヤーに思ってもらうための手法です)


その後、真相ルートに入るための条件がゲーム内のHELP画面で
確認できるようになるのですが、そこにはかなり沢山の条件が載っています。
実は、これらの条件には全て理由があります。

本作は、約100年前に発生した殺人事件の被害者達が、
実際の事件の記憶を元に構成された「不思議の国」という閉じられた空間の中で
殺人鬼に再び出会い、そして殺されるまでの経験を何度も何度も繰り返す
……というお話がベースにあるのですが、真ENDに辿り着くための条件は

 1.数ある行動選択の中でも、実際の事件に近い状態を再現する
 2.真ENDを迎えるために必要な「イザヤ」という存在について
   登場キャラクター達が思い出したり、言及するイベントを発生させる
 3.現実では自ら命を絶った主人公が、本当は生きることを望んでいた
   ということをプレイヤーに知ってもらう

と、なっています。


もし「1.」に関わる条件を満たさず真相ルートに進めるようにしてしまうと、
プレイヤーは100年前の殺人事件の詳細を文章で読んで知るのみになり
「実際にあった悲惨な出来事」という疑似体験をもてないまま
物語を進めてしまうことになります。

また、「2.」の条件に登場する「イザヤ」というキャラクターは
真相ルート以外ではゲーム冒頭のイベントにしか登場しないため、
条件を満たさず進行すると、プレイヤーは
「何故イザヤが彼らを救う主人公ポジションになったんだ?」
という根本的な点に疑問を抱いてしまうことになります。

そして「3.」の条件は最も重要で、
本作では「希望のある選択」を行わなかった場合、
必ずBAD ENDに繋がるようになっています。
主人公である少女が
「死後に辿り着いた不思議の国でも尚、
 希望を探してさまよっているのだ」という
解釈ができる選択肢を選ばなければ
真相ルートには入れない
、となっているのです。

alice2.png
こんなに沢山……と思うかもしれませんが、やってみると簡単なものばかりで、
真相エンドに繋がる内容であることが分かる行動ばかりです。


まとめます。


選択肢を使ったゲームのポイントは、

「分岐条件とその結果」をしっかりリンクさせること。
そして、自在に分岐させているようでいて、
トゥルーエンドに至る道のりは
しっかりと意味があるものになっていること
です。

プレイヤーは「自分で選んだ道だ」と思い、
深くキャラクターに共感しながら、
あなたの敷いたレールの上を走って行くことでしょう。



【難易度:中】ゲームデザインの中に、キャラクターの設定を活かす。

 「それっぽい雰囲気」じゃない、「意味のあるゲームデザイン」を作ろう!
 他にはない、あなたが作った物語の特性やキャラクターの個性を活かしてみましょう。



ファンタジーだから、アイコンを剣の形にしよう。
メルヘンものだから、BGMはクラシック音楽にしよう。
和風だから、和柄のパターンを使ってイラストを描こう。

こういった「雰囲気作り」のための工夫と努力は
恐らくほとんどの作者さんが一生懸命やっているのですが、
ここでは「雰囲気作り」ではなく、明確な理由付けの下で
ゲームデザインの中に物語の一部を組み込んで行く
こと

について解説します。



事例1.主人公の視界を、プレイヤーに共有させる。

RPGツクールVX Ace製『ベルとお菓子の家_R』の主人公ハンスは、
他人の顔を識別することが出来ないキャラクターです。
彼にとっては、鏡に映る自分さえ「人間の顔」程度の認識しか出来ません。

ber.png
人の顔を認識できない主人公が、そのことを告白するシーン。


そんな彼に見えている世界と、プレイヤーさんの見る世界が少しでも近付くようにと、
キャラクターの立ち絵は全てシルエットで表現しています。


キャラクターの顔が見えない事で、彼らの表情を想像する余地があり、
受け取り手に様々な想像を働かせることができる、
という効果もありました。



事例2.主人公の特徴を、戦闘コマンドに活かす
RPGツクールXP製RPG『月夜に響くノクターンReBirth』。
主人公はかつて魔王と恐れられた吸血鬼のレヴィエル。
戦闘コマンドの定番「逃げる」というお決まりのコマンドも、
彼が主人公の本作では「畏怖の邪眼」と名付けられており、
彼の邪眼によって敵を振るい上がらせ追い払うことができる
という設定がされています。

tukiyo.png
一睨みで敵を追い払う……主人公の内に秘めた強さが伺えます


たとえイベントで「彼はとてつもなく恐ろしい人だ!」と
どんなに説明されても、
戦闘コマンドに「逃げる」という項目があるだけで、
「かつては恐れられていたはずの魔王が雑魚モンスターに
 背中を向けて逃げるんだ」……と思われてしまい、
説得力に欠けてしまいますよね。

こんな風に、物語の一部をゲームシステムに
直接組み込んで行くことができれば、
「物語のあるゲームならでは」の表現ができるようになります。


【!】この場合、気をつけなくてはいけないのは
  「設定やシナリオを活かすために
   プレイヤーに不自由を強いてはならない」

  ということです。たとえば、かよわい女の子を保護して、ある場所まで
  連れて行かねばならない!という時に、リアリティを出すために
  その女の子がやたら足手まといになったりすると、
  プレイ意欲を削いでしまいかねません。
  もし「か弱い女の子」という設定を活かすとしても、
  敵が出て来たら先に逃がしてあげて、プレイヤーだけが
  戦うようにするとか、足を引っ張る代わりに何か
  他に役立つ技能を持っているなど、
  うまくバランスを取る必要がありますよね。



 【難易度:難】 ゲームだからこその機能を活かす

  漫画やアニメ、映画や小説には真似できない、
  「ゲームだからこそできる表現」を探してみましょう!



事例1.見慣れたはずのメニュー画面を、イベントの一部として利用する
RPGツクール2000製ホラーADV『Ib』。
この作品では、通常のメニュー画面では操作キャラクターの立ち絵と
持ち物が表示されるのみで、特にメニュー画面の中で何か操作する
という事はありませんが、本作ではこのメニュー画面が
演出でうまく活用されているシーンがあります。

マルチエンディングシステムの『Ib』には、主人公の同行者となる
絵画の中から出て来た少女「メアリー」が現実世界に出て行こうと目論むものの、
結局自身が「絵画」でしかない非情な現実をつきつけられるというエンドがあります。

絵画の世界から、夢見ていたはずの現実世界に飛び出してきた
彼女を待ち受けていたのは、誰もいない、無音の世界。
呼んでも叫んでも誰も答えてくれない、無人の美術館。

だんだんと世界から光が失われていく中、彼女はただ
おろおろとあたりを駆け回り、叫ぶことしか出来ません。


そんな中、プレイヤーが彼女のために何か出来ることはないのかと
メニュー画面を開くと……先程まで精巧に描き込まれていたはずの
メアリーの立ち絵が、子供のらくがきのような絵にすり替わっているのです。
さらに画面が暗くなっていくと、メニュー画面も恐ろしいことに……。

「キャラクターに迫り来る運命を変えるために、何かしたい」という
プレイヤーの心理を巧みに利用したギミックですね。

meari-1.png
(左)スケッチブックに描かれたメアリーの姿と所持品。
(右)変化後のメアリー。彼女が所詮絵画でしかないのだという非情な現実を、
プレイヤーは目の当たりする。



事例2.システムそのものに、物語の分岐を組み込んでしまう
RPGツクールVX Ace製ホラーADV『氷の世界』。この作品の主人公は
温和な性格の少年ですが、バトルの際には、任意で凶暴な人格と切り替えて
戦わせることが出来ます。ただし、全てのバトルは回避することも可能で、
本作においては必ずしも戦う必要はありません。


にも関わらず、プレイヤーが凶暴な人格を呼び起こし敵と戦わせる
という選択をした場合、その凶暴な人格に主人格が負けてしまい
人格の主導権を奪われるというルート(エンディング)が開放されます。


会話イベントの中で起こる選択肢ではない、
システム部分での行動選択が物語の展開に影響する例です。

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通常は敵に遭遇した場合、戦うか逃げるかの選択肢が出ますが、
凶暴な人格に入れ替わっている場合、問答無用で敵に襲い掛かります



もうひとつ例を。

RPGツクールMV製ホラーADV『アリスの娘』では
多くの選択肢がコマンド入力式のミニゲームになっています。
例えば、進む道を選ぶ時の「右か左」という単純な分岐であっても
プレイヤー自身がRight、またはLeftと入力しなければ
前に進むことが出来ません。

alice3.png
左の4つが十字キーに、右の2つが決定キーとキャンセルキーに対応している。


更にこのミニゲームは追跡者に追われている状態なので
制限時間もあります。ホラーゲームですので、
もし追跡者に追いつかれてしまうと、当然怖い目に……。

こんな風に、単純な選択肢であっても
状況に応じて制限時間を作って選択を迫ったり、
ミニゲームで選択肢を選べるようにすることで
プレイヤーが「自分の努力で勝ち得た道」だと
感じられるようになるわけです。




事例3.ゲームだからこそ出来る、“ゲーム中ゲーム”
劇中劇、という言葉をご存知でしょうか。舞台やテレビドラマの中で、
役者役の人がお芝居をするシーンのことをそう呼びます。
(劇の中に劇がある……そのまんまですね)

RPGツクールVX Ace製ホラーADV『星が降る国』は、
RPGツクールのRTPで作られたゲームのキャラクターが
ゲームの世界を抜け出し、現実世界にやってくるというお話です。

ゲーム前半は、主人公がゲームの中から
どうやって現実世界に出て行くかを冒険しながら探して行くため、
画面はツクラーなら誰もが見慣れたRTPを中心としたのRPG風の世界です。


ところが、ゲーム後半で主人公が現実世界にやってくると、
画像は全て実写になり、主観ビューの
ポイントクリック形式のゲームに切り替わります。

突然の変化に戸惑うプレイヤーさんも多かったですが、
ここでようやく「これはホラーゲームなのだ」と
感じて頂ける演出でもありました。


「舞台はゲームの中の世界である」という設定を、
そのままゲームのシステムに活かした内容です。
劇中劇ならぬ、ゲーム中ゲームを作ってみた例です。

hoshi.png
左がゲームの中の世界、右は現実世界。
マップだけでなく、フォントの種類や台詞の表示の仕方も変わっている。



●まとめ


ゲームならではの物語表現についてまとめます。


大前提として、ゲームには
「プレイヤーが入力をしなければゲームが進まない」
という特性
がある。

そのため、ゲームを楽しんでもらうには
つい入力したくなってしまうような
気になる要素を数珠つなぎにする必要がある。



気になる要素を作る1番簡単な方法は
「物語を分岐させること」。



予想外の展開やバッドエンドを見せることで、
もっと違った展開、もっと良い結末が見たい
というプレイを進めるための動機を与えることが出来る。

ただし、理不尽なバッドエンドではやる気が削がれるため
選択肢には納得感のある、意味のあるものにすることが重要。



高度なテクニックとして、
ゲームのシステムやグラフィック表現を
物語やキャラクターにあわせて変えていく
というものがある。

時には、ゲームそのものの種類(ジャンル)を
変えることすらできる。



これらのテクニックにより、ゲームは
「入力するたびに、何かが変わっていく」ものになり
プレイヤーは入力が楽しくなり、
どんどん入力してゲームを進めたくなります。


そして、入力を進めていった結果
意味のあるシーンが連続すると、プレイヤーに
「自分自身がゲームから物語を見いだした」
という感覚が生まれます。



これこそが、ゲームらしい物語表現なのではないでしょうか。




●終わりに


今回、例としてあげた作品は全て「RPGツクール」で作られた
先輩ツクラーさんの手がけた作品です。
つまり、やり方さえ分かれば誰にでも
必ず真似出来るようになるテクニック
だということです。

もちろん、完成度の高い作品を、となると
表現的なテクニックだけを使えればいい
という訳ではありませんが……
今回紹介させて頂いた事例は、
どれもゲームならではの物語の魅せ方として
きっとヒントになると思っています。

あなたの作った最高の物語を、
ぜひRPGツクールで
最高のゲームに仕上げて下さい!



ジグル



*関連リンク

ツクールMVでプラグインを作るための現実と作法 筆者:トリアコンタンさん
本記事と同様、ニコニコ自作ゲームフェスMV開催に伴い執筆されたブログ記事で、
Javascript言語でプラグインを作るための詳細なガイドになっています。


第2回 ニコニコ自作ゲームフェス クリエイターズ勉強会

中村光一氏によるゲーム制作に関する生の質疑応答が見られます!



*本稿で紹介させて頂いたフリーゲーム一覧
 ※()内は使用されているツクールのバージョン


Ib (2000) <ダウンロード>
作者:kouri  <公式サイト>


魔女の家 (VX) <ダウンロード>
作者:ふみー  <公式サイト>


クロエのレクイエム (VX) <ダウンロード>
作者:ブリキの時計 <公式サイト>


Lost Maria -名もなき花-(2000) <ダウンロード>
作者:ImCyan <公式サイト>


月夜に響くノクターンReBirth(XP) <ダウンロード>
作者:ショウ  <公式サイト>




*以下は筆者自身の作品

ベルとお菓子の家_R(VX Ace) <ダウンロード>
氷の世界(VX Ace) <ダウンロード>
星が降る国(VX Ace) <ダウンロード>
アリスの娘(MV) <ダウンロード>
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